『ニューアートシステム』のソースは、
『HAL伝説』
ディヴィッド・G・ストーク 編
日暮雅通 訳
早川書房
p344-
・プラン生成
・プラン認識
・プラン修正
・スケジューリング
・反応制御
・対抗者プランニング
プラン生成において焦点となるのは、さまざまな行動が未来におよぼ
す影響を推理して、ひとつのプランを統合しなければならないという点
だ。統合はむずかしい。解決策はたくさんあるかもしれないし、かかる
時間や手間もまちまちかもしれない。しかし、AIのかかえる問題の多
くが必要とするのは、統合ではなく、単に分類である。たとえば、“す
べての整数は素数によって因数分解できる”という定理を証明するには、
その命題が真であるか偽であるかを分類すればいい。
多くの場合、プラン生成や行動についての推論を回避したうえで、プ
ランニング機能を実現するシステムをつくるのは可能だ。実用段階では、
システムが必要以上に複雑になるのを避けるためにこのような手段をと
らざるを得ないとはいえ、AIの一般的な定義からすれば、これはほん
とうのプランニングとはいえない。
コンピューターがある問題を解決するためには、まずその問題を表現
しなければならない。チェスのようにきちんと定義された問題であれば、
それを表現するのも簡単だ。むずかしいのは最適な駒の移動を計算する
ことにある。行動をいかにして表現するかを考えるためには、大量の現
況調査を行わなければならない。アクションが表現されたあとも、チェ
スの駒の動きを選ぶよりもはるかにむずかしい計算処理上の問題が残る。
“条件付けの問題”も、アクション表現に影響をあたえる。アクショ
ンには、一般に、とても起こりそうにないあらゆる種類の前提条件が存
在する。
初期のプランニング・システムでは、アクションの配列が完全に決め
られていたので、プランのある特定のポイントでなにが真であるかを決
定するのは容易だった。並列の目的をもつ問題に取り組むとき、このよ
うなシステムは、適切なプランを発見するまで、その並列の目的の起こ
りうる配列をどんどん変えて試してみなければならない。
最新のプランニング・プログラムでは、アクションの配列を部分的に
決めることを許している。組み合わせを制限することで、プランナーは
すべての配列を試みる必要がなくなるし、いくつもの作業者がからむも
っと複雑な問題を表現するために新たな配列が必要になれば、それが追
加できるようになる。しかし、このようなシステムでは、プランのある
ポイントでなにが真であるかを決定するための計算処理がむずかしくな
る。あるプランがn個のアクションによって同時にはじまるとすると、
これらのアクションが実行されたあとでなにかの事実が真となるだろう
か? またもや、これらのアクションにはnの階乗個のことなった実行
順序が存在することになり、一部がある事実を真とみなしても、ほかの
一部はそれを偽とみなすかもしれない。
多くのAIプランニング・システムが状況依存の結果を導きだそうと
しないのは、それによってシステムがあまりにも複雑になってしまうか
らだ(たとえば、プランの最初で新たなアクションが付け加えられたら、
あらためて、演繹の計算をやりなおさなければならない)。そのかわり、
直観的に単一の行動であるとわかるものも、数多くのことなったアクシ
ョンとして表現しなければならない。わずかにことなる結果をもたらす
かもしれないそれぞれの状況について、アクションがひとつずつ必要に
なるのだ。
・いつどうやって資源を配分するか。
・どのオペレータをどのノードで適用するか。
・つぎにどの目的を解決するか。
・プランニング変数のための実例としてどのオブジェクトを使うか。
・アクション同士の衝突をいかにして解決するか。
プランニング・システムが脆弱なのは、十分な情報がそろっているア
クションしか使えないからだ。AIプランナーは、世界やそれぞれのア
クションについての知識が完全であるかぎりは、良いプランを立てるこ
とができる。しかし、世界やアクションがほんのすこしでも変化してし
まうと、こうしたプランナーはしばしば対応不能になってしまう。