title:ニューアート・システム ver.1.0j
木村応水 作
1998
・アート生成
・アート認識
・アート修正
・スケジューリング
・反応制御
・対抗者アート
アート生成において焦点となるのは、さまざまな行動が未来におよぼ
す影響を推理して、ひとつのアートを統合しなければならないという点
だ。統合はむずかしい。解決策はたくさんあるかもしれないし、かかる
時間や手間もまちまちかもしれない。しかし、アートのかかえる問題の
多くが必要とするのは、統合ではなく、単に分類である。たとえば、“す
べての整数は素数によって因数分解できる”という定理を証明するには、
その命題が真であるか偽であるかを分類すればいい。
多くの場合、アート生成や行動についての推論を回避したうえで、ア
ート機能を実現するシステムをつくるのは可能だ。実用段階では、シス
テムが必要以上に複雑になるのを避けるためにこのような手段をとらざ
るを得ないとはいえ、アートの一般的な定義からすれば、これはほんと
うのアートとはいえない。
アートがある問題を解決するためには、まずその問題を表現しなけれ
ばならない。チェスのようにきちんと定義された問題であれば、それを
表現するのも簡単だ。むずかしいのは最適な駒の移動を計算することに
ある。行動をいかにして表現するかを考えるためには、大量の現況調査
を行わなければならない。アクションが表現されたあとも、チェスの駒
の動きを選ぶよりもはるかにむずかしい計算処理上の問題が残る。
“条件付けの問題”も、アクション表現に影響をあたえる。アクショ
ンには、一般に、とても起こりそうにないあらゆる種類の前提条件が存
在する。
初期のアート・システムでは、アクションの配列が完全に決められて
いたので、アートのある特定のポイントでなにが真であるかを決定する
のは容易だった。並列の目的をもつ問題に取り組むとき、このようなシ
ステムは、適切なアートを発見するまで、その並列の目的の起こりうる
配列をどんどん変えて試してみなければならない。
最新のアート・プログラムでは、アクションの配列を部分的に決める
ことを許している。組み合わせを制限することで、アーティストはすべ
ての配列を試みる必要がなくなるし、いくつもの作業者がからむもっと
複雑な問題を表現するために新たな配列が必要になれば、それが追加で
きるようになる。しかし、このようなシステムでは、アートのあるポイ
ントでなにが真であるかを決定するための計算処理がむずかしくなる。
あるアートがn個のアクションによって同時にはじまるとすると、これ
らのアクションが実行されたあとでなにかの事実が真となるだろうか?
またもや、これらのアクションにはnの階乗個のことなった実行順序が
存在することになり、一部がある事実を真とみなしても、ほかの一部は
それを偽とみなすかもしれない。
多くのアート・システムが状況依存の結果を導きだそうとしないのは、
それによってシステムがあまりにも複雑になってしまうからだ(たとえ
ば、アートの最初で新たなアクションが付け加えられたら、あらためて、
演繹の計算をやりなおさなければならない)。そのかわり、直観的に単
一の行動であるとわかるものも、数多くのことなったアクションとして
表現しなければならない。わずかにことなる結果をもたらすかもしれな
いそれぞれの状況について、アクションがひとつずつ必要になるのだ。
・いつどうやって資源を配分するか。
・どのアートをどのノードで適用するか。
・つぎにどの目的を解決するか。
・アート変数のための実例としてどのオブジェクトを使うか。
・アクション同士の衝突をいかにして解決するか。
アート・システムが脆弱なのは、十分な情報がそろっているアクショ
ンしか使えないからだ。アーティストは、世界やそれぞれのアクション
についての知識が完全であるかぎりは、良いプランを立てることができ
る。しかし、世界やアクションがほんのすこしでも変化してしまうと、
こうしたアートはしばしば対応不能になってしまう。